法人としての神社は神社明細帳に登録されていた時代の神社、昭和21年の宗教法人令時代の神社、そして昭和26年〜現在の宗教法人法の3種類があります。登記上、法人としての神社は現在の宗教法人法に基づく神社になっているのが普通ですが、神社の所有する不動産は現在の宗教法人法に基づく神社名義に登記されているとは限りません。ですから神社名義不動産の登記事項証明書をとってみて、登記の日付が昭和25年以前だったり、所有者「村社○○神社」などと社格が記載されている場合、現在の宗教法人法に基づく神社に不動産を承継する登記が必要になります。また不動産の所有者として登記されている神社が法人登記されていないない場合は話が面倒になりますので、司法書士におまかせください。
宗教法人法第18条の承継を称する書面とはどのようなものか
登記申請書に会社法人番号を記載すれば閉鎖登記簿謄本を添付しなくてもよいか
神社明細帳のまま宗教法人に移行しなかった神社の財産はどのようにして処分すればよいか
宗教法人法施行当時解散とされた神社の不動産
おまけ 宗教団体法の寺院などに移行できなかったお寺の所有する不動産の登記
神社財産登記・公衆礼拝用土地建物である旨の登記
神社財産登記の抹消
公衆礼拝用建物およびその敷地である旨の登記
神社所有の建物表題・保存登記
建物表題登記
建物保存登記
宗教法人法第18条の承継を称する書面とはどのようなものか
宗教法人法附則第18条の承継登記の「承継を証する書面」とは具体的にどのような書類を指すのでしょうか。
一つには、現在の宗教法人の登記事項証明書および閉鎖登記簿謄本および旧宗教法人の閉鎖された登記簿謄本が承継を証する書面となります。旧宗教法人の閉鎖された登記簿謄本の予備欄に
「○○都道府県知事の嘱託により昭和二一年司法、文部省令第一号附則第五項の登記をした」という記載と、
「年月日何市何町何丁目何番何号何法人の設立登記をしたので宗教法人法附則第一九条により閉鎖する」
という記載があれば、その神社は神社明細帳から旧宗教法人を経て現在の宗教法人になっていることが証明できます。
しかし、旧宗教法人の閉鎖登記簿が法務局に存在しない場合もあります。この場合には、旧宗教法人から新宗教法人に移行した当時に作製した神社規則が承継を証明する書類として考えられます。なぜなら、昭和26〜28年当時旧宗教法人は規則を作成しその規則について所轄庁の認証を受けて宗教法人法の宗教法人となったはずですから、規則に所轄庁の認証文があれば、それが承継したことを証する書面となるものと考えられます。ここで問題となるのは、上記の神社規則は、旧宗教法人から新宗教法人へ移行したことの証明であって、神社明細帳から旧宗教法人に移行したことは証明できない、という点です。
登記の先例では、この場合は都道府県知事から発行された「宗教法人令附則第3項による届出を受理した旨の証明書」をつけて登記する、とされています。具体的な証明申請手続は各都道府県の宗教法人担当課にお問い合わせください。
なお、実際に登記申請する際は事前に法務局に相談することをおすすめします。
宗教法人法施行当時解散とされた神社の不動産
昭和21年に宗教法人令の宗教法人に移行したけれども何らかの理由で宗教法人法の宗教法人に移行しなかった神社所有の不動産の処分手続について。この場合は解散したままの状態となっているのか、あるいは解散とされた後に実態は全く同じ宗教法人法に基づく宗教法人を設立しているかによって少し手続が違ってきます。具体的に言うと、
登記年月日や登記原因が昭和26年よりも前の神社名義の不動産があり、その登記名義神社の閉鎖法人登記簿を請求すると閉鎖登記簿謄本が発行でき、法人登記事項証明書を請求すると請求法人なし、と回答があった場合。この場合は昭和26年頃に解散した宗教法人であると判断できます。
しかし、登記年月日や登記原因が昭和26年よりも前の神社名義の不動産があり、その神社の閉鎖法人登記簿謄本が発行でき、法人登記事項証明書も発行されるのだけれども、法人設立年月日が昭和50年〇月〇日等と記載されている場合、同じ名称・主たる事務所であっても閉鎖登記簿謄本記載の神社と法人登記事項証明書記載の神社は法人としては別法人となります。
これは何らかの理由で宗教法人法の宗教法人に移行しなかった宗教法人令の神社について、宗教法人法施行後に実体は全く同じ神社の宗教法人を改めて設立したものです。いずれにしても宗教法人令の神社としては解散していますので承継登記はできません。清算人を選任して不動産を処分することになります。
この場合は神社明細帳のまま解散した神社と違って昭和26年当時の代表役員は判明しますのでうまくいくとまだ当時の代表役員が生存している可能性はありますがかなりの高齢であるはずなので、やはり裁判所で清算人を選任して裁判所の監督の元、清算手続を進めていくことになると思います。解散・清算手続は概ね上記宗教法人にならずに解散した神社と同じ手続をすることになります。
本事例の注意点としては、宗教法人令の神社としては解散したが宗教法人法施行後に実体は全く同じ神社の宗教法人を改めて設立した場合、不動産登記の登記原因年月日が昭和21年〜26年までであればよいのですが、戦前の登記原因年月日であった場合、その不動産は清算人からの申請でいったん昭和21〜22年〇月〇日承継を原因として宗教法人令の神社に承継登記し、その後現宗教法人法の神社に移転登記することになる、という点です。
おまけ 宗教団体法の寺院などに移行できなかったお寺の所有する不動産の登記
明細帳から宗教法人令に基づく宗教法人に移行できなかった神社については上記のとおりですが、宗教団体法施行時に宗教団体法に基づく宗教法人になれなかったお寺とその所有する不動産はどうなったのでしょうか?
例えば不動産登記情報に昭和15年4月1日より前の日付で所有者が○○寺、○○堂、等と記載され、○○寺、○○堂の法人登記簿が閉鎖登記簿を含めて存在しない場合、その不動産の所有権移転登記をする際の登記手続はどのようにすればよいのでしょうか。
宗教団体法以前、宗教団体を管理する台帳としては神社明細帳の他に寺院明細帳、仏堂明細帳があり、他に堂宇、宗教結社など明細帳に記載されていない宗教団体が多数存在しました。宗教団体法によれば、
教派、宗派(条文からするとこれば現在の包括宗教法人にあたるようです)は無認可宗教法人とみなされ、施行後1年以内に教規または宗制を作成して主務大臣の認可を受けることとされています。(法第31条)
施行時寺院明細帳に登載されていた寺院は設立認可法人とみなされ、祠宇は設立認可教会とみなされました(現在の単立宗教法人・被包括宗教法人に当たると思われす)。これらは施行後2年以内に規則を作成し地方長官の認可を受けることとされました。認可を受けた法人は嘱託登記で法人登記されました。(法第32条)
施行当時設立許可を受けていた宗教団体は無認可の宗教法人とみなされました。これらは施行後2年以内に規則を作成し地方長官の認可を受けることとされました。施行当時設立許可を受けていた宗教団体、とは明治以降設立された宗教団体で、宗教団体に関する根拠法がなかったため官公署が設立許可を出した宗教団体だと思われます。(法第33条)
施行時仏堂明細帳に登載されていた仏堂は施行後2年以内に寺院に属するか寺院か教会になることができました(現在でいえば未登記のまま合併するか単立宗教法人となるか、ということだと思います)。どちらの手段も取らない場合はなお2年間は従来のとおり存続することとされました。(法第35条)
宗教団体法施行時に上記の手続きを行わなかった場合は当然法人ではない宗教団体となるわけですが、問題は、寺院明細帳、仏堂明細帳に登載されていた寺院・仏堂が宗教団体法に定められた手続きを行わなかった場合はどうなるのか?という点です。
宗教団体法施行令においては、仏堂については他の寺院に属することも寺院・教会となることもしなかった場合は2年間の期間満了を持って解散したとみなす、という規定があります(第41条)が、寺院明細帳についての規定は見つけられません。寺院・仏堂明細帳に登載され法人格を認められていた寺院・仏堂が宗教団体法の宗教法人に移行しなかった場合、その寺院名義の不動産があればどうなるのでしょうか。
宗教団体の解散については勅令でこれを定めるとされており(法第14条)、その勅令である宗教団体法施行令によれば、解散した宗教団体については規則の定めるところか清算人を選任して財産を処分することとされております(令第29条)。そして上部団体である教派・宗派・教団が解散した場合、下部団体である寺院・教会は2年以内に他の教派・宗派・教団に属さなければ解散とみなされました(令第30条)。
以上の条文からすると仏堂明細帳に登載された仏堂名義の不動産についてはその仏堂の従来からあった規則に従って清算手続きをするか、利害関係人から裁判所に清算人を選任申立を申請し清算手続の一環として不動産を処分することになると思います。利害関係人についての手掛かりはありまして、令第42条には、解散とみなされても3カ月以内に実際の管理者が地方長官に公衆礼拝施設として届出れば引き続き宗教施設として存続できる、とされております。届出られた施設は公衆礼拝施設台帳に登載されたと聞いていますが詳細は不勉強で分かりません。ただ、今となっては清算人選任申立てをするのが現実的だと思います。
問題は寺院明細帳に登載された寺院の場合ですが、正直なところこの事案については経験がありません。宗教団体法と宗教団体法施行令の解散に関する条文と神社明細帳から宗教法人令の宗教法人に移行できなかった神社に関する通達を類推適用すれば、仏堂と同様の手続きをすることとなると思われますがいかがでしょうか。
登記申請するときは法務局に相談して申請することをおすすめします。
神社財産登記の抹消
神社財産の登記は比較的よく見かける登記かもしれませんが、どのような意味で登記されているのかよく分からないと思っている方も多いと思います。神社財産の登記とはどのような登記なのでしょうか。神社財産ニ関スル法律(明治41年法律第23号)によれば、この法律の趣旨は現宗教法人法の第68条の趣旨と同じようなものと考えてよさそうです。この法律も昭和21年勅令第71号1条により昭和21年2月2日付けで廃止されているので、境内地が用地買収にかかった時など土地の分筆・合筆手続をする必要が出た時、抹消しないと登記が進められないなど将来問題になるかもしれません。
昭和23年の法務省の通達と昭和34年の法務省の通達によれば、法令が廃止されたからといって法務局が職権で登記を抹消することはできず、現在の名義人から登記まつ消の申請をする(手数料無税)、ということになります。
登記申請する上での注意点
1.現在の土地の所有権登記名義人(神社でなくともよい)が単独で申請する。
2.登記原因は「昭和21年2月2日神社財産登録廃止」。
3.登録免許税は無税。
登記申請するときは法務局に相談して申請することをおすすめします。
公衆礼拝用建物およびその敷地である旨の登記
公衆礼拝用建物およびその敷地である旨の登記とは宗教法人法66条に基づく登記です。この登記がされた不動産は差押をすることができないとされています。この登記をすることによって代表役員・責任役員が個人的になした借金などから神社を守ることができます。ただし、この規定はすべての場合において差押を免れることができるものではありません。登記した抵当権・根抵当権を実行された場合や裁判所の出した破産宣告に対抗することはできません。宮司職にあるものとしては日頃から自分の行いを正し不用意に代表役員印を押印しないことが必要です。
登記申請にあたっては都道府県知事からの「公衆礼拝用建物であることの証明書」「公衆礼拝用建物敷地であることの証明書」である旨の証明書が必要となります。証明書の申請方法については各都道府県担当課にお問い合わせください。
登記申請するときは法務局に相談して申請することをおすすめします。
普通の神社の御社殿は未登記だと思いますが、文化財登録を申請する際など建物を登記する必要が出てくる場合があります。この登記は製図の技術などが必要になりますので、下記の事項をご一読の上、極力土地家屋調査士・司法書士におまかせくださいますようお願いいたします。
建物表題登記
建物を登記するにあたりまず第一段階として建物の表題登記を行います。申請にあたり苦労する点としては以下の点があげられると思います。
所有権を証する書面
普通の家を新築して登記する場合は建築確認関係書類、工事人の証明書などがありますが、昔からある神社に普通そんな書類はありません。昔からある神社を登記する際に所有権を証する書面として考えられる書面としては、
1.電気代の領収書−神社名で支払っているもの。代表役員個人の名前で支払っているものは不可。
2.地震・火災保険証書−これも神社名で支払っているもの。
3.建物の敷地の固定資産課税台帳写−これも神社名で納付していること
4.神社庁の神社明細書(位置略図・配置略図が載っているもの)
5.工事人からの工事完了引渡証明書−近年立て替えや改修工事をしている場合は発行できると思うので相談してみるといいです。
の以上5点が考えられます。
建物図面・各階平面図
作製するにあたっては法務局の地図や公図を調べて神社敷地の隣接地番を確認し、建物の実測をして床面積を計算し、不動産登記法に適合した様式で図面を作製しなければなりません。正直建築関係の図面が作製できる技術を持っている人でないと建物図面・各階平面図を作製するのは難しいと思います。
旧宗教法人から現宗教法人への承継証明書
神社の場合、現在の宗教法人になる前に建てられた建物を登記することが多いと思います。この場合不動産の承継登記と同じ理屈で、神社を建てた神社と現在の神社が宗教法人としてつながることの証明書をつけなくてはなりません。
以上の点からして、建物表題登記は土地家屋調査士に依頼することをおすすめします。どうしても個人で登記申請をしたい場合は添付書類の問題や図面の作製などで法務局から何回も補正の連絡があり、何回も法務局に足を運ぶことになると思います。かなり時間がかかることだけは覚悟しておいた方がよいです。また登記申請する際はほぼ100パーセント法務局職員が実地調査にきますので、案内図もつけた方がよいと思います。場合によっては案内を依頼されるときもあります。
建物保存登記
建物表題登記がすんだら所有権保存登記をします。難しいいい方をすれば、所有権保存登記をしなければ神社名義の建物として他人に所有権を主張することができません。簡単に言えば所有権保存登記をしなければ登記事項証明書をとっても提出先に「証明書になりませんよ。」といわれることが多いはずです。
申請書自体は表示登記と比べて単純ですが、登記手数料を無料にするための都道府県知事の非課税証明書(不動産の承継登記のときと同じ)を取得するための時間と手間がかかります。
また、神社の場合、現在の宗教法人になる前に建てられた建物を登記することが多いと思います。この場合不動産の承継登記と同じ理屈で、神社を建てた神社と現在の神社が宗教法人としてつながることの証明書をつけなくてはなりません。具体的な書類はこのページ最初の項目の宗教法人法第18条の承継を称する書面をご参照してください。
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